ナースでダイバーのかんこです
スキューバーダイビング(アクアラング)しているというと必ず聞かれるのが、
「怖かったことなかった?」
そりゃ、ありますよ! 30年もダイビングしていれば
そこで、怖かったこと特集
1.ダイビング歴10本で6人連れて潜り、流された
都内の某ダイビングショップでライセンスをとり、ファンダイビングにも連れて行ってもらった
引率のインストラクター一人で、15~20人くらいのツアーで、大瀬崎に到着。
5~7人のグループに分けられて、自分たちで潜るというスタイル
今でこそあり得ないけど、そんなものかと思っていた
かんこさんは10本も潜っているから、みんなを連れて、潜ってきてね
と、7人のリーダーとして、大瀬崎の岬で潜ることになった
若くて海大好きイケイケダイバーだった私は、初めてのポイントにもかかわらず・・・せっかく潜るんだから、内湾ではなく岬の先端で潜ろうと、他のグループが準備しているところを通り抜け、最先端でエントリーした
7人で水面を泳ぎ、さあ、潜降・・・やけに陸が遠いなあと、ちらっと思ったのだが
何せ私が10本だから、他の人はそれ以下、沈める人、なかなか沈めない人、バタバタしながら、30メートルまで潜って・・・何もない・・・海底がない・・・
水の中に見えるのは一緒に潜ったはずの2人くらい
そのうち2人もどこかへ消えてしまった
どうしてよいのかわからず、とりあえず、水面に出た
自分ひとり、誰もいない、遠くに大瀬崎の岬と灯台が見える
陸に戻らなければ・・・と、泳ぎだした
他の人がどこにいるのか?
横を見ると、同じように泳いでいる人が一人見えた
一生懸命泳いで、顔をあげると、灯台が全然近づいてない、むしろ遠ざかっているかも
30分くらい泳いだろうか?
もう体力も限界・・・まだ、20歳くらいだったけど・・・もうダメかも
その時、思い出した・・・コンパスの使い方を
進行方向に灯台を合わせ、Nの数値がずれないようにすれば、前が見えなくてもまっすぐ進むことができる
コンパスを合わせ、ちょっとだけ、多分5メートルくらい潜って、泳いでみた
5分くらい泳ぐと海底が見え始め、浮上して顔をあげると灯台がすぐそこだった
陸に上がると、先に上がった仲間が一人いて、だれか知らない人が「何人で潜ったんだ?」と大声で聞いてきた。
7人です・・・・そのうち1人上がってきて・・・後の4人は、沖で水上スキーを引っ張っていた船に救助された
というわけで、大きな事故にならずに済んだのですが、ほんと怖かった
引率のインストラクターに報告したら、そりゃ大変だったね・・・と
しかも、船で助けられた4人が、昼休み船に乗せてくれるって言っているよ、と誘われて、ボートで遊んだというノー天気さ、若いって良いね
助けてくれた人々ありがとうございました!
教訓
あったりまえだけど、おだてられて10本でベテランだと思っちゃったんだよね
ちゃんとガイドを付けて潜りましょう
10本以下7人グループなら、ガイドと後ろにしんがりを付けるのが安全ですよね
初心者だったから、潮流ということも知らなかった
この時は、潮流が速く、潜降する時点ですでに流されていた
エントリー前に海面を見て、流れがどうなっているのか、確認して潜りましょう
先端とか危険なところではなく、内湾の安全なところを選択しましょう
ガイドさんがいても、何が起こるかわからないから、
基本的なコンパスの使い方はマスターしておきましょう
はぐれちゃうかもしれないしね。難しいことはともかく、
どっちが陸か沖か、まっすぐ進む方法だけでも知っておくと、役に立ちます
流れているところを逆らって泳いでも、体力を消耗するだけ
違う方法トライしてみよう
この時はたまたま海面だけが沖出しだったけど、いつもそうとは限らないので、
潮の流れを考えて、行動してみよう
海面にいて、BCが膨らんでいて、タンクのエアーかシュノーケルがあれば、
命は守れるので、落ち着いて考えることが大事です
とんでもない大失敗だったけど、この経験が今とても役に立っています
皆さんのお役にはたったかなぁ?
2.与那国のハンマーヘッドロックから一人だけ流された
今でこそ、ウミウシやカエルアンコウ大好きで、写真も撮るけど、もともとは大物派ダイバー、回遊魚やサメを追いかけて、神子元や三宅島、イナンバ、吐噶喇列島とか行きました
ハンマーヘッドを追いかけて、与那国に行った時の出来事
ドリフトダイビング、10人くらいのグループで水深30mくらいのハンマーヘッドロックにつかまって、ハンマーが来るのを待っていた。
抜けるような透明度で、潮が速く、顔の横にあるシュノーケルがパタパタいっていた
左には夫のけんじ君が、右隣には一緒に来た仲間が、同じように必死にロックにしがみついていた
どんどん流れが速くなり、つかまっている手に力を入れたが、激しい流れにいよいよ耐え切れなくなった
そして、とうとう手が離れてしまった
あ・・・と思ったときには、みんなが捕まっているロックが小さく見えた
私だけが流された・・・・だれか気が付いて・・・・
天国に行くときは、こんな感じだろうと思った
地上が小さく見えて、自分は上がっていく
事故った・・・・漂流して・・・死んでしまうのかも・・・・・
そんな時、ガイドさんが、気が付いて泳いできてくれた
白馬の王子様に見えた
王子様は、私のインフレーターホースをつかんで空気を抜いてくれようとした
その時、気が付いた
私だけ流されるのはおかしい・・・
流されたのでも、吹き上げを食らったのでもない・・・
私は、インフレ―ターホースから空気を抜こうとしていた王子様の手を払いのけて中圧ホースを外した
そのとたん、流れから外れ、ゆっくりと沈み始めた
抜けるような透明度の中、私の足から外れたフィンが、ひらひらと落ちていくのが見えた
王子様に指でフィンを取りに行ってくれと指示した
フィンをはかせてもらって、何もなかったようにロックに戻っていった
教訓
今回の事件は、インフレーターボタンの塩がみにより、BCに空気が入り続けたことによる吹き上げだった
流れがなければ、まっすぐ浮上してすぐに気が付いたけど、流れが速かったので斜めに上がっていき、浮上しているとは思わなかった
潜る前には、インフレーターボタンが、正常に動くこと、特に押して戻ることを確認しよう
器材を洗うときは、ボタンが塩がみしないように念入りに洗いましょう
そして、定期的にオーバーホールしましょう
ほんと怖かった
助けてくれた王子様・・・船に上がってから謝りました
手を振り払ったこと、フィンを取りに行かせたこと
3.パラオのガイドさんが、突然岩にしがみついて動かなくなった
いつも、お客さんの面倒見ているので、パラオに行った時くらい、ダイビングを満喫しようと、ルンルンで潜っていた・・・10人くらいでジャーマンチャネルで潜っていた時のこと
透明度がよいパラオの海、日本にはいない魚たちを眺めながら、みんな思い思いにすごしてると・・・・ガイドさんが、岩にしがみついたまま動かなくなった
何やら、インフレーターホースを石でたたいている?
夫のけんじ君が気が付いて、自分のオクトパスをガイドさんにくわえさせた
ふたりは、一体となり、浮き上がり、けんじ君は、ガイドさんのBCを体から外した
あっという間に、BCとタンクは、地上に上がっていった
そして、私たちは、みんなでゆっくりと水面に浮上した
その日の夜、夫のけんじ君と、飲みに行った
日本人観光客のいないローカルな店に行こうと、ちょっと離れたクラブみたいなところに入った
扉を開けた途端、後悔した・・・・ローカルすぎ・・・現地の人しかいない
いかついパラオ人の男たちが、薄暗いなかで飲んでいた
入った途端、みんなが一斉に私たちを見た
日本人だ・・・お前たちが来るところじゃない・・そんな風に感じた
とりあえず、ビールをたのみ、席についた
ひそひそと、私たちを見ながら話している、視線が痛い
そのうち、一人のパラオ人が近寄ってきて
サンキューといった・・・サンキュー?
そして、ビールをおごってくれた
どうやら、あの時のガイドさんがいたらしく
みんなに、助けてくれたのは、あの人だと触れ回ったようで
次々とみんなが声をかけてくれた
けんじ君は、一晩限りのヒーローでした(笑)
教訓
今回のケースも2と同じように、インフレ―ターの器材トラブルでした
その上さらに、インフレーターホースと中圧ホースが外れなくなってしまっていた
メンテナンスについては、2をみてね
トラブルがあったときに、BCとタンクを捨てるという決断をしなければならないときもあります
かなりの勇気がいりますが、ちょっと遅れていたら、体ごと吹き上げられて大事故につながっていたでしょう
オクトパスの使い方、エアーのあげ方、あげるときに相手の体をつかむこと、を体で覚えておきましょう
4.バディのオクトパスが2つに増えた?
大瀬崎の外海でエントリーした
エントリー口から縦に一列に並び、夫のけんじ君の後ろで、潜り始めた
目の前に、けんじ君のオクトパスが見えていた
そのうち、オクトパスが2つになった
オクトパス2つもつけてたかな?・・・・?
その時、彼が振り向いた。その口には、マウスピースだけがついていて・・・・まるで胃カメラをするときにマウスピースを付けられた人のようだった
彼は、何事もなかったかのように、オクトパス・・・ではなく、レギュレータをマウスピースにつけて、潜りを続けた
教訓
- マウスピースをレギュレーターに取り付けるときは、インシュロックで確実に固定しよう
レギュレータのマウスピースをしっかり固定しなかったために、マウスピースからレギュレータがはずれて落っこちた
けんじ君に言わせると、急に軽くなったからおかしいなと思って、吸わなかったと
初心者だったら、海水を吸い込んでパニックになっていたかも
怖い話・・・だけど・・・間抜けな話でした
5.バディのオクトパスから大量の空気が噴出
伊豆海洋公園、クエ穴で、ほら、魚がいるよ!と振り返ったら、バディのオクトパスから大量のエアーが出ていた
ダイビング歴30本くらいの彼女は、どうしてよいのか、戸惑っていた
彼女のゲージをみると、70ヘクトパスカル、私が120だから、かなり早くなくなっている
ファーストが飛んだ・・・
彼女のBCをつかんで、浮上の合図を送った
彼女のゲージを見ながら、ゆっくり浮上する
彼女の眼を見ると、落ち着いていて、呼吸も速くなかった
ゲージが50になったところで、オクトパスに替えて、浮上した
海面にでて、BCの空気を膨らませて、シュノーケリングで陸まで帰った
教訓
今回は、割と想定内の出来事
海中でファーストステージが故障することは、そんなに数は多くないけど、あり得ることです
バディシステムを守り、オクトパスに切り替えて浮上しましょう(詳細は3を参照)
問題は、どの時点でオクトパスに切り替えるかということ
オクトパスに切り替えることも、リスク・・・相手が初心者であればナオサラ
できれば、自分のエアーだけで上がりたいものですが、水面でBCが膨らむだけのエアを残しておきたいので、50の時点で切り替えました
想定内とはいえ、こわかったです
彼女が落ち着いていてくれてよかった
相手の表情を見ることも大事ですよね
6.海中で突然海面に上がりたくなった
海の中でも、日常生活で陸にいるのと同じくらい違和感なく過ごせるのですが、
海面に上がりたくて上がりたくてどうしようもなくなったことが、2回だけあります
一回は、与那国で水深25~30メートルの流れに逆らってハンマーヘッドを探し泳いでいた時のこと
もう一回は、伊豆海洋公園で講習生を3人つれて、エントリーして4メートルの海底での出来事
暑い日で、ウエットスーツを着たまま講習生に説明し、タンクのセッティングなどの準備をし、海に入って、潜行出来ない人を沈ませて、とやっているうちに、体力を消耗してしまった
4メートルの海底に沈み、次の行動を講習生たちに指示しようとしたときに、海面に上がりたくて上がりたくて、自分でもパニックになるかも・・と不安になった
自分だけ上がっちゃおうかと思ったけれど、講習生を置いていくわけにもいかず、
講習生に悟られないように何とかしなくては・・・
その時、自分が働いている集中治療室の患者さんのことを思い出した
集中治療室の患者さんは、ときどき、興奮したり、変なことを言い出したりするのだが、そういう時はだいたい、酸素消費量と酸素供給のバランスが取れていないときなのです。つまり、身体が必要とする酸素量が足りないということ
身体を動かしたり、熱が出たりすると酸素がたくさん必要になるから、それだけ酸素が必要になる。そういう時、看護師は安静を促したり、熱を下げたりという対処をする
そこで、講習生に海底でとどまるように指示を出し、自分も動かず静止した。
しばらくすると、上がりたい気持ちはなくなり、不安も消え、いつも通り呼吸も楽になってきた。
教訓
・自分の体力の限界を知る
・なるべくエネルギーを温存する
・不安や浮上したくなったときは動かないで、酸素消費量を抑える
自分で気が付かないうちに体力を消耗したり、酸素の必要量が増えていたりするもの
特に年齢があがり、日常的に運動不足になると、思ったより体がついていかない
また、暑い日は、ウエットスーツの着脱やスーツを着ての行動でかなりの体力をつかっています。
無駄な動きを減らし、体力を温存するようコントロールしましょう
どうしても上がりたくなったり、不安になったとき、あわてて浮上したりしないで、とりあえず、じっとする。きっと落ち着いてきます!
今回は、ひそかに怖い出来事でした
講習生に悟られないように、対処しなければならなかったから